今回は、行政書士有資格者(=行政書士法による「行政書士または行政書士試験合格者」)が行うことができる「法律の一般的な解説」の範囲を、まとめてみました。
行政書士は法律の専門職ではありますが、弁護士のように個々の案件に対する法律判断(=法律相談・法律事務)を行うことはできません。
しかし、法令や制度に関する「一般的」「抽象的」なレベルの説明・解説であれば行うことができます。
行政書士が「できる」一般的な法解説の例
◆ 法令の内容や制度の仕組みの説明
- 相続制度の流れや「遺言の種類」の説明
- 会社設立の手続きの一般的な流れ
- 許認可制度(建設業・飲食店営業許可・産廃許可など)の基本要件の説明
- 入管制度や在留資格の種類と概要
- 自動車登録制度や車庫証明の一般的な説明
◆ 手続きの概要や行政の仕組みに関する説明
- 役所への申請に一般的に必要とされる書類の種類
- 行政手続法や個人情報保護制度の概要
- 裁判外紛争解決(ADR)の仕組みの説明
◆ 書類作成に関連する「一般的な注意点」の説明
- 契約書には通常どんな条項が入るかの一般論
- 内容証明郵便の一般的な使い方(※紛争性が高い場合は注意)
- 委任状・議事録などの書面構造の一般的な説明
行政書士が「できない」こと(禁止される法律事務)
✖ 個別の事情を踏まえた法律判断・法律相談
- 「このケースでは相続人は誰になりますか?」
- 「相手に損害賠償請求できますか?」
- 「この契約書のこの条項は無効ですか?」
これらは弁護士法72条で禁止される「法律事務」に該当。
✖ 紛争性のある案件についての助言・代理
- 交通事故の示談交渉
- 相続人間の争いの調整
- 取引先とのトラブル解決
- 不倫慰謝料請求に関する対処方法の助言
これは弁護士のみが可能。
✖ 裁判手続に関する書面作成や助言
- 訴状・答弁書の作成
- 行政訴訟に関する書類
- 法廷での代理や助言
「一般的な解説」としてできる表現方法のポイント
以下のように “条件を特定しない一般論” として説明するのが安全です:
- 「一般に、遺留分侵害額請求は○年以内に行う必要があります。」
- 「相続では通常このようなステップで進みます。」
- 「契約書には一般的に〇〇条項が入ります。」
- 「在留資格には△△などの種類があり、それぞれの特徴は…」
逆に、特定の個人の事情に踏み込む説明は法律事務となるため不可。
行政書士試験合格者(未登録)の場合
行政書士試験に合格していても、行政書士登録をしていない限り
- 行政書士業務(申請代理・書類作成)を収入として行うことはできない
- ただし「一般的な法制度の説明」(=法律一般知識の提供)は可能
という扱いになります。
まとめ
行政書士は、法制度や手続の「一般的な仕組み・流れ・注意点」について解説することができるが、個別事案に踏み込んだ法律判断や紛争に関する助言はできない。
行政書士は 自身の業務(許認可・契約書等)に関する範囲で
➡ 法律の“一般的な解説”をすることができる。
ただし
➡ 個別具体的な法律判断や争いのある案件への助言は不可。
(弁護士の独占業務)

コメント