社会保険労務士(社労士)試験において、**男女雇用機会均等法(均等法)**は「一般常識(労一)」の科目で非常に頻出度の高い法律です。
この法律は条文数が少ない一方で、細かい「指針(ガイドライン)」や「具体的な事例」が問われるのが特徴です。効率的に攻略するためのポイントをまとめました。
1. 最重要!頻出ポイントの整理
試験対策として、以下の4つの柱を完璧に抑えましょう。
① 性別を理由とする差別の禁止(第5条・第6条)
- 各ステージでの禁止: 募集・採用、配置・昇進・降格・教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇のすべてにおいて、性別を理由とする差別は禁止です。
- 例外(ポジティブ・アクション): 「女性のみ」を対象とした募集や、女性を優先する措置は、**「現状で男女間に格差がある場合(女性が4割以下など)」**に限り認められます。
② 間接差別の禁止(第7条)
一見、性別を条件にしていないように見えて、実質的に性別差別となる措置は原則禁止です。以下の3つの限定列挙を覚えましょう。
- 募集・採用時の「身長・体重・体力」の要件
- 募集・採用、昇進、職種の変更時の「転居を伴う転勤」の要件
- 昇進時の「過去に転勤の経験があること」の要件
攻略のコツ: これら以外の条件(例:学歴など)は、現時点では「均等法上の間接差別」には指定されていません。
③ 婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(第9条)
- 不利益取扱いの禁止: 解雇はもちろん、降格、減給、契約更新の拒否なども禁止。
- 解雇の無効: 妊娠中や産後1年以内の解雇は、事業主が「妊娠が理由ではない」と証明しない限り、原則として無効になります。
④ セクシュアルハラスメント(第11条)
- 措置義務: 事業主には、セクハラ防止のための**「雇用管理上の必要な措置(相談窓口の設置など)」**を講ずる義務があります(努力義務ではなく義務です)。
- 対象: 男性から女性だけでなく、女性から男性、同性間も含まれます。
2. 合格のための学習戦略
目的条文(第1条)の暗記
選択式対策として、目的条文は重要です。「日本国憲法の理念」「法の下の平等」「母性を尊重」などのキーワードを正確に覚えましょう。
事例問題(〇×判断)に慣れる
「〇〇というケースは違反か?」という形式の問題が多く出ます。厚生労働省の指針(パンフレット等)にある具体例を一通り見ておくと、得点源になります。
紛争解決の手続き
裁判外紛争解決手続き(ADR)の流れも頻出です。
- 苦情処理: 事業主は自主的な解決に努める。
- 援助・調停: 都道府県労働局長による「援助」や、両当事者の申請による「調停」があることを押さえましょう。
3. 2026年試験に向けた注意点
社労士試験では、常に最新の改正情報が狙われます。
- 女性活躍推進法との連動: 均等法は「差別禁止」、女性活躍推進法は「数値目標や公表」と役割が分かれています。この違いを明確にしておきましょう。
- カスタマーハラスメント(カスハラ): 直近ではカスハラ防止も議論の対象となっており、均等法第11条(セクハラ)に関連した指針の変更がないか最新テキストで確認してください。
参考動画
【社労士試験】目的条文+α読み上げ/労働編 この動画では、男女雇用機会均等法を含む主要な労働法の目的条文を音声で確認できるため、通勤・通学中などの「耳学」に最適です。
[Social Insurance and Labor Consultant Examination] Purpose clause + α reading / Labor section [2… – YouTube


「労働一般常識における他の重要法律(育児介護休業法など)」**との比較表
次は、**「労働一般常識における他の重要法律(育児介護休業法など)」**との比較表を作成します。
それでは、「男女雇用機会均等法」と、セットで出題されやすく混同しやすい「育児・介護休業法」、**「女性活躍推進法」**の3つの違いを整理しましょう。
ここを整理しておくだけで、一般常識(労一)の得点力がグッと安定します。
労働一般常識:女性・両立支援系3法の比較
| 法律名 | 主な目的 | 事業主の義務(主なもの) | 選択式キーワード |
| 男女雇用機会均等法 | 差別の禁止・平等の確保 | セクハラ・マタハラ防止措置、母性健康管理措置 | 性別を理由とする差別、間接差別、不利益取扱いの禁止 |
| 育児・介護休業法 | 仕事と家庭の両立支援 | 育児休業・介護休業制度の整備、意向確認・働きかけ | 職業生活と家庭生活の両立、子の養育、家族の介護 |
| 女性活躍推進法 | 活躍の推進(積極的改善) | 行動計画の策定・届出、女性活躍情報の公表 | 職業生活における活躍、状況把握・課題分析 |
💡 攻略のための追加アドバイス
- 「指針」からの出題に注意均等法は「何がセクハラに該当するか」「何が不利益取扱いに該当するか」といった厚生労働大臣の指針の内容が問われます。過去問を解く際は、解説に載っている指針の文言まで目を通しておきましょう。
- 数字の暗記(女性活躍推進法との関連)一般常識では数字が狙われます。
- 女性活躍推進法の一般事業主行動計画の策定義務:常時使用する労働者101人以上(100人以下は努力義務)。
- 均等法のポジティブ・アクション:女性割合が4割以下の区分で実施可能。
- 母性健康管理措置(第12条・13条)「通院休暇の確保」や「勤務時間の短縮」など、妊産婦に対する措置は義務です。ここが「努力義務」と入れ替えられて出題されるパターンが多いので注意してください。
この3法の違いを意識するだけで、模試や本試験での「どっちの法律だったっけ?」という迷いがなくなります。
「間接差別の3つのケース」
次は、均等法の中でも特にややこしい**「間接差別の3つのケース」**について、具体的な具体例(判例など)を詳しく解説します。
**「間接差別」**は、言葉の定義だけではイメージが湧きにくいため、具体的な「3つの禁止ケース」と、試験で問われる「ひっかけパターン」を整理します。
間接差別の3つの禁止ケース
本来、性別を限定していなくても、**「実質的にどちらかの性別に不利になる条件」**を課すことは、正当な理由がない限り禁止されています。
| 禁止される措置の内容 | 具体的なイメージ・例 |
| 1. 募集・採用時の「身長・体重・体力」 | 「身長170cm以上限定」といった基準。警備員や配送業などで、その基準が業務に不可欠でない限りNG。 |
| 2. 募集等・昇進・職種変更時の「転勤」 | 「全国転勤ができること」を応募や昇進の条件にすること。広域展開していない企業がこれを課すのはNG。 |
| 3. 昇進時の「転勤経験」 | 「過去に転勤したことがある人だけを課長にする」という基準。育児等で転勤が難しかった女性を排除することにつながるため。 |
⚠️ 試験対策の重要ポイント
① 「限定列挙」であること
ここが最大の攻略ポイントです。厚生労働省令で定められているのは、上記の3つのケースのみです。
- ひっかけ例: 「募集・採用にあたって、**『一定の学歴』**を条件にすることは、間接差別に該当し禁止されている。」
- 答え: ×(学歴は、現在の均等法では間接差別の限定列挙に含まれていません)
② 「合理的な理由」があればOK
これら3つの条件であっても、業務上どうしても必要という**「合理的な理由」**があれば認められます。
- (例:重労働が主体の業務で、科学的に必要な体格基準を設定する場合など)
- 試験では「いかなる場合も禁止される」という極端な選択肢は × になることが多いです。
過去問で狙われる「不利益取扱い」との区別
間接差別と合わせて狙われるのが、第9条の**「不利益取扱いの禁止」**です。
Q. 以下のうち、均等法で禁止されているものはどれか?
- 女性であることを理由に、基本給を男性より低く設定すること。
- 妊娠・出産したことを理由に、正社員からパートタイムへの変更を強要すること。
- 正解: 両方禁止ですが、1は第6条(差別禁止)、2は**第9条(不利益取扱い禁止)**の違反です。
- 特に2の「妊娠・出産」を理由とする不利益取扱いは、「本人の同意」があっても、自由な意思に基づかない場合は無効とされる判例(広島中央保健生協事件)が非常に重要です。
これで均等法の主要な壁はほぼ突破できました!
「目的条文(第1条)の重要キーワード」
次は、選択式試験で穴埋め問題として狙われやすい**「目的条文(第1条)の重要キーワード」**を穴埋め形式でチェックしてみます。
選択式試験では、「なんとなく覚えている」状態だと、似たような言葉に惑わされて失点してしまいます。
以下の空欄に入る言葉を推測してみてください。特に( )の部分は本試験で狙われやすいキーワードです。
男女雇用機会均等法 第1条(目的)
この法律は、法の下の平等を保障する**( A )の理念にのっとり、雇用の分野において男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の( B )**を尊重しつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることを目的とする。
解答と解説
- A:日本国憲法
- 「労働基準法」や「厚生労働省」などと入れ替えられることがありますが、根本は憲法です。
- B:母性
- 「育児」や「私生活」ではなく、生物学的な**「母性」**という言葉が入ります。均等法は「平等」と「母性保護」の二段構えであることを意識しましょう。
💡 ここも出る!選択式対策キーワード
条文の続きや関連規定で、穴埋めになりやすい用語をピックアップしました。
- 「実質的な」平等
- 単なる形式的な平等ではなく、格差を是正するための「ポジティブ・アクション」を含む実質的な平等を指します。
- 「配置」・「昇進」・「降格」
- 差別禁止の対象範囲として、これらが並んで出てきます。「教育訓練」や「福利厚生」もセットで覚えましょう。
- 「職務の遂行に不可欠」
- 間接差別において、その措置が認められるための条件(合理的な理由)として使われるフレーズです。
最後の仕上げ:マタハラ・セクハラへの視点
最近の試験では、ハラスメント対策も「一般常識」として重要です。
- マタハラ(マタニティハラスメント): 妊娠・出産を理由とする解雇などは「してはならない(禁止事項)」。
- セクハラ: 職場におけるセクハラ防止のために「必要な措置を講じなければならない(雇用管理上の措置義務)」。
※注意点: 均等法には「罰則」がほとんどありませんが、厚生労働大臣による**「勧告」に従わなかった場合、「社名公表」**という社会的制裁があることを覚えておいてください。
男女雇用機会均等法の攻略法は以上になります!
「労働基準法の中の『男女同一賃金の原則(第4条)』」**との違い
次は、均等法とよく比較される**「労働基準法の中の『男女同一賃金の原則(第4条)』」**との違いについて確認します。
ここ、試験ですごく狙われるポイントです!
労働基準法第4条(男女同一賃金の原則)と男女雇用機会均等法は、どちらも「男女の平等」をうたっていますが、**「守備範囲」と「違反した時のペナルティ」**が全く違います。
比較表で一気に整理しましょう。
労働基準法 第4条 vs 男女雇用機会均等法
| 比較項目 | 労働基準法 第4条 | 男女雇用機会均等法 |
| 対象となる範囲 | 「賃金」のみ | 雇用プロセスすべて(募集・採用、配置、昇進、教育、福利厚生など) |
| 禁止の内容 | 女性であることを理由とする差別(不利だけでなく有利な扱いも禁止) | 性別を理由とする差別、間接差別、不利益取扱いの禁止 |
| 罰則の有無 | あり(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金) | なし(指導、勧告に従わない場合の「社名公表」のみ) |
| 不利益・有利の扱い | 有利な扱いも禁止(男性より女性を高くするのもNG) | 女性への有利な扱いはOK(ポジティブ・アクション) |
💡 試験で狙われる「ひっかけ」3選
1. 「賃金以外」はどっちの法律?
- ひっかけ: 「労働基準法第4条は、賃金、昇進、教育訓練について男女差別を禁止している。」
- 正解: ×。労働基準法4条がカバーするのは**「賃金」だけ**です。昇進や教育は均等法の守備範囲です。
2. 「女性を優遇」するのは違反?
- ひっかけ: 「女性労働者の賃金を男性よりも有利に設定することは、労働基準法第4条に違反しない。」
- 正解: ×(違反する)。労働基準法4条は「差別的取扱い」を禁止しており、これには**「有利に扱うこと」も含まれます**。
- ※一方、均等法では格差是正のための「女性のみの募集」などは認められています(ポジティブ・アクション)。
3. 罰則があるのはどっち?
- ひっかけ: 「男女雇用機会均等法に違反し、都道府県労働局長の勧告に従わない場合、罰金が科せられる。」
- 正解: ×。均等法に罰金はありません。あるのは**「社名公表」です。罰則(懲役・罰金)があるのは労働基準法**の方です。
まとめ:覚え方のコツ
- 労働基準法4条: 「お給料(賃金)だけは絶対!違反したら罰則(タイホ)もあるぞ!」という強い姿勢。
- 均等法: 「募集から退職までトータルで平等にしよう。でも、まずは行政が指導して、言うこと聞かなければ名前を出すよ」というソフトな姿勢。
次は、これらに関連して**「賃金以外の労働条件(労働時間や休日など)の男女差別」**についてはどの法律が担当しているか、解説が必要でしょうか?

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